「国保逃れ」1万1610人が資格喪失 厚労省の事業所調査で38社
厚生労働省の事業所調査で、実態のない役員として国民健康保険を逃れていた1万1610人が被保険者資格を失った。
今何が起きているか
厚生労働省は、2026年3月から8月末にかけて実施した事業所調査の結果、38社で計1万1610人が国民健康保険の被保険者資格を喪失したと公表した。個人事業主が、実際には業務をしていない役員として健康保険組合などに加入し、国民健康保険料の負担を逃れていた事例が発覚した。
なぜ起きているか
国民健康保険は自営業者や非正規雇用者らが加入する制度で、保険料は所得に応じて決まる。一方、従業員向けの健康保険組合は事業主と折半で保険料を負担するため、収入が高い個人事業主ほど国保の負担が重くなりやすい。実態のない役員登記によって保険料負担を軽減する抜け道が生じていた。
影響範囲
資格を失った1万1610人は、国民健康保険への切り替え手続きが必要となり、未納期間があれば保険料の追徴や給付制限を受ける可能性がある。同様の役員登記をしている個人事業主や、その家族も対象になり得る。調査対象となった38社の従業員や取引先にも事務負担が及ぶ。
今後どうなりそうか
厚生労働省は2026年3月に、業務実態のない役員を被保険者として認めない方針を都道府県に通知しており、今回の調査はその運用の一環とみられる。今後も同様の事業所調査が続き、資格喪失者数はさらに増える可能性がある。健康保険組合側にも加入審査の厳格化が求められる。
今意識したほうがいいこと
個人事業主として役員登記をしている場合、実際の業務実態や報酬の有無を確認し、必要なら社会保険労務士や年金事務所に相談する。資格喪失の通知を受けた場合は、自治体の国民健康保険窓口で切り替え手続きを早めに行い、保険料の未納が生じないよう注意する。
社会への影響
国民健康保険は加入者の高齢化と所得減少で財政が厳しく、負担逃れが広がれば制度の持続性に影響する。一方で、実態のない役員を一律に排除すると、小規模事業者の負担が急に増える懸念もある。制度間の公平性と事業者支援の両立が問われる。